以前、作品の素材には無垢の木材を使っていました。最初は紀であれば何でもよいと思っていましたが、やっているうちに木材についての情報がだんだんと溜まってきて、杉や松といった一般的に見かける物以外にもさまざまな材木があることを知り、さらにそれらはさまざまな性質もあるということに気がつきます。
金属だって鉄だけではなく、鉛もあれば銅もあり、色も固さも全部違うことを何となく知ってはいるものの、材木にも硬い木や柔らかいもの、色だって千差万別だということに気付いて、実際に比べて見たり、触るだけでも感触までみな違うことに驚いて、その色の違いを利用し、形のありようも強調できると思ったのです。
ドボンと水に沈んでしまうものもあり、黒から白、黄色や紫とかたちのコントラストになると、大いにそれを利用したものでした。
この写真の作品はみな小さいもので、端材から十分にできますが、岩手へ移ったころからその無垢の材料を持ち上げることがとても難しくなり始めたので、ベニヤ板を使って、空洞の作品を作り始めたのです。
そんなこともあって、テーブルなどはそれ以後作ったことがありませんでしたが、テーブルが欲しいという人があって、20年ぶりに取り掛かったのですが、もうむかしのように材料がありません。
材木屋では「シャム柿」という名前で通っている暑さ8センチ近い黒い板が2枚残っていたのでそれを使うことにしましたが、これがものすごく重い。テーブルの幅は110センチといわれていたので、バンドソーでひき割るのですが、硬いこと硬いこと。何とかカンナをかけて端も平らにしてはぎ合わせて、なんとか希望の幅に近づけることはできたけれど、厚みが1。3センチくらいになってしまいました。それでも持ち上げるとやっと持ち上がるくらいの重量です。裏に桟を入れてたわまないように工夫しなくてはなりません。そうすると、脚を取り付ける幕板との取り合いを慎重に考えないとなりません。
ことほどさように、20年ぶりのテーブル制作の作業は慎重に進んでいますが、まだ完成形の姿を決めかねています。
テーブルの形は脚の形とのバランスが決定的に大事だと思うし、最終的な形を考えながら進めるというのは非常にスリルがあって、作っている本人にとっては面白くて仕方がありません。
そうそう、このシャム柿というのは柿でも何でもなく、メキシコから中米にかけて産出するジリコテという名前が本当のところらしいです。日本には柿の木の中心あたりに黒い模様が入るものがあり、それを黒柿といって銘木とされていますが、それに名前を勘違いするように材木屋が勝手に付けた名称だそうです。材木屋がつける材木の名前には本当に紛らわしいものだらけで、少しでも高く売れるように、もっともらしい名前で流通させるのが常だということです。
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